IBMの二の舞か。トヨタのソフトバンク提携で感じた「一抹の不安」|【OMM特集】大塚和成のネット・ITの気になる話

【この記事の紹介について】

大塚和成です。本日紹介する気になるニュースは『IBMの二の舞か。トヨタのソフトバンク提携で感じた「一抹の不安」』です。


IBMの二の舞か。トヨタのソフトバンク提携で感じた「一抹の不安」

10月4日の記者会見で発表され、世間を驚愕させたトヨタ自動車とソフトバンクの提携。Uber等の登場で自動車業界を取り巻く環境は大きく変わろうとしていますが、トヨタはその荒波をソフトバンクと手を組むことで乗り切ることができるのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では著者で世界的エンジニアの中島聡さんが、この提携を「IBMとMicrosoftの提携によく似ている」としてその理由を記すとともに、トヨタはソフトバンクに一番美味しいところを持っていかれることになりかねないと危惧しています。


● トヨタ自動車がソフトバンクを選んだ「必然」

先週、トヨタ自動車が、ソフトバンクとモビリティサービスの合弁会社を設立するという発表をし、大きな話題になりました。この件に関しては、私自身も友山副社長とは何度もお会いしており、ソフトウェアの重要性、そして、持つ時代から必要に応じて使う時代へのシフトに備えない限りは、自動車はコモディティ化するという話は、何度も熱く語り合って来ました。

ソフトバンクと組むというのは私にとっても意外でしたが、一番の理由は、やはりソフトバンクがUberやDiDiなどのライドシェアリング・ベンチャーに大きく投資していることもあり、彼らに対するソフトバンクの影響力に期待したのだと思います。

しかし、たとえこんな座組みでソフトバンクと組んだところで、ハードウェアのコモディティ化は避けられないと私は思います。力を入れるべきは自動運転やライドシェアリングのソフトウェアであり、モビリティ・サービスそのものです。

ソフトバンクと組んだものの、重要なソフトウェアとサービスはソフトバンクに開発してもらい、顧客に対するモビリティ・サービスはUberが提供するのでは、ハードウェア(自動車)は付加価値が低い、誰もが作れる製品になってしまうことは確実です。

その意味では、今回の提携は、80年代のIBMとMicrosoftの提携によく似ていると思います。パソコンというこれまでとは全く違うコンピュータが出て来たときに、IBMは自分でOSを作らずにMicrosoftに任せてしまったのです。結果として、パソコンは世界中に普及し、Microsoftの企業価値は大きく上昇しましたが、ハードウェアはコモディティ化し、最終的にはIBMはパソコン事業から撤退しました。

この提携が同じような顛末を迎えるとは限りませんが、気をつけないと「ソフトバンクに一番美味しいところを持っていかれる」ことになりかねないと私は思います。


● Masayoshi Son, SoftBank, and the $100 Billion Blitz on Sand Hill Road

ソフトバンクの孫正義さんの凄さは、なかなか日本では理解されていないようですが、この記事を読むと、彼が「シリコンバレーの基準に照らしても桁外れに凄い」ということが良くわかります。

既にシリコンバレーの投資家たちの間でも、Yahoo!やAlibabaへの先行投資などの成功により孫さんの名前は良く知られていましたが、今回のVision Fundは、その規模と戦略の両面で桁外れで、(Googleなどへの先行投資で良く知られた)Sequoia Capitalですら、意識せざるを得ない存在になったのです。

Vision Fundのやり方は、ベンチャー企業がしのぎを削る成長性のある分野で、1つの企業を選んで莫大なお金を投資し、そのお金によってその企業が、業界のNo.1になることを狙うという、キングメーカーのような手法です。

通常のVenture Capitalは、まだ市場が立ち上がる前に可能性があるベンチャー企業に数多く投資し、10社に1社が大化けすることを狙います。つまり、打率は1割ぐらいで十分な、ハイリスク・ハイリターンなのです。

しかし、Vision Fundは、既にある程度成功したベンチャー企業に、その業界で独占的な立場を取るのに必要な資金を渡すため、期待している打率は遥かに高いのです。別の言い方をすれば、1社に大量に投資することにより、投資リスクを減らすという、他のVenture Capitalにはなかなか出来ないことをしているのです。

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